霧の狐道120

ghanayama
 軽トラックはスピードを上げて走る。
夕日に照らされた橋が段々小さくなり、道なりに右にカーブしたら橋は左の方にス~ッと見えなくなった。
橋が視界から消えて、ようやく俺はホッとした。
涼しい風が、顔に当たる。

“ ここまで来れば、もう大丈夫だ。
 でも、あの女の子と男の声は何だったんだろう?
 それに、橋には行き倒れもいたようだし・・・・。
 あ、ひょっとして、この爺婆も、あの橋で何か見ているかも知れないな。
 ちょっと、聞いてみようかな・・・。”

俺は、首を右に回して運転席に声を掛けた。

「 誰か、橋の辺りで見なかったですか?」

助手席の婆さんが、俺の声に答えた。

「 うにゃ、聞こえんがな。
 エンジン、うるさいがなァ。」

俺は、もう一度聞いた。

「 だ・れ・か・い・た・か!!」

婆さんは言った。

「 えっ、掻いたかってかァ?
 ああ、畑で蚊に刺されたわな。
 ホンに痒いわな。」

婆さんは、顔をポリポリ掻いた。
俺は、言った。

「 掻いたじゃなくて、誰かいたか!」

婆さんは、言った。

「 えっ、歯イタってかァ?
 おまえ、歯も痛いのかのォ?
 爺さん、爺さん、歯が痛いって言ってるがの。」
「 なんじゃと、婆さん。
 そりゃ、大変じゃ!
 外科と歯科の両方ある医者は、総合病院じゃのう。
 分かった、じゃ、こっちだ!」

軽トラックは、急にUターンして、さらにスピードを上げた。

「 うわ~~っ!」

俺は、振り落とされそうになって、軽トラックの荷台の枠にしがみ付いた。

「 うがっ!」

体中に激痛が走る。



☆HOMEページに戻る。
  HOMEページ