日々の恐怖 12月23日 一万円分(6)
日々の恐怖 12月23日 一万円分(6)
安堵した様子で家に戻るKちゃんのお母さんを見送り、その姿が向こうに消えたところで
俺は左拳を開く。
Kちゃんのお母さんが握らせたのは紙幣だった。
額面は一万円。
俺は慌ててズボンのポケットにしまい、周囲に誰もいないかを確認した。
別に悪いことをしているわけではないが、小五が持つには分不相応な大金だ。
思わぬ臨時収入に心が浮き立つ一方、俺はことの重大性をひしひしと感じはじめた。
子供に渡す口止め料として一万円は高すぎる。
つまりそれほど重い秘密なのだ。
” これは死ぬまで黙っていないといけない、Kちゃんのためにも・・。“
と、その時はガキなりに決意した。
翌日、Kちゃんは普通に登校してきた。
特に変わった様子はない。
少しほっとした俺は、下校時、いつも待ち合わせる場所でKちゃんを待った。
ほどなくしてKちゃんは来たが、俺の前では表情を強ばらせている。
「 ごめんねM君。
もうM君とお話しできないんだ。
じゃないと、Sと一緒にいられなくなるから・・・。」
小刻みに身体を震わせながらそれだけ言うと、Kちゃんは背中を向けて一度も振り返らずに
俺から離れていった。
小さくなる背中を見つめながら俺は、終わったと巨大な喪失感に襲われた。
結局Kちゃんは俺ではなくSちゃんを選んだのだ。
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