日々の恐怖 1月14日 海に住むもの(3)

ghanayama



  日々の恐怖 1月14日 海に住むもの(3)



 親父はどう考えても飛び込んだ方が早いと思ったが、普段の冷静なJさんの様子が何かおかしく、鬼気迫るものがあったので、デッキにある備え付けの救助浮き輪を外し、Hさんめがけて投げつけた。
 上手く近くに着水した浮き輪をHさんが掴んだのを確認して、親父とJさんは浮き輪に結び付けてるロープを引っ張ったが、Hさんがこちらに向かって泳いでいるのに、何かに流されてるようで中々思うように引き上げられない。
しかも、Hさんの周りの波の動きが妙な感じで、なにかが泳ぎまわってるようだった。
 Jさんは引っ張りながら大声でヨットの中で寝てる友人二人を呼び、起きたばかりで状況のいまいちわかってないながらも親父とJさんの作業を手伝い、大の男4人掛りで何とか引き上げに成功した。
 親父が、

「 大丈夫ですか!?」

とHさんに呼びかけると、肩で息をしていたHさんが、

「 出すぞ!!!」

と周囲に響き渡るような大声を上げた。
 それが合図になったかのかJさんは物凄い勢いで係留ロープを外し、ほぼ同時にHさんがエンジンをかけて、普段のHさんからは想像もできない荒い操縦でヨットは桟橋から離れた。
親父にはHさんを引き上げたあたりからずっと、

「 ンゥゥゥゥ~ゥゥン~ゥゥン・・・・・。」

と牛蛙の鳴声のような男の鼻歌のような声が聞こえおり、入り江から出た後もずっと聞こえていた。
 操縦しているHさんの様子も明らかにおかしく、ただ事ではない事態に巻き込まれたのは間違いない。
Hさんに何があったのか問いただそうとすると、Jさんが、

「 あかん・・・、追ってきてますわ・・・。」

と震えながら言う。
 JさんはHさんが落ちた時に、その周囲には人間の子供ぐらい大きさのの異様に白い何かが複数見えたそうだ。
親父が飛び込もうとした時にそいつらは一斉にJさん、親父の方を向いたが、ライトの光を反射とかそういうレベルじゃなく目が真っ赤に光っていた。

「 今は見えないが、気配だけは島から離れた今もずっと付いてきている気がする。」

 親父が妙な声が聞こえるかと尋ねると、無言で首を縦に振った。
Jさんの友人2人も声は聞こえているらしく、Jさんの話を聞いて明らかに狼狽している。
 親父も肝が冷えて変な汗が止まらなかった。
Jさんが話し終わるとHさんが、

「 俺には見えんかったけどな。
タモの先を何かが引っ張りよったせいで落ちた。
気がついたら海の中で、浮き上がろうとすると、見えんけど何かが足首や腕にしがみついてきた。」

と苦い顔をして言った。
 親父やJさんの友人2人も、Hさん、Jさんが冗談を言ってる様には見えず、もう島からはかなり離れており、航路はとりあえず出発した港に向かっているが、妙な声がまだ聞こえる。
 数分とも数時間とも時間感覚がないまま全員沈黙していたが、ふと考えが親父の頭をよぎった。
その時なぜそんなことを思いついたのかわからないが、捕まえてバケツに入れていたイカを海に逃がそうと思ったらしい。
 親父が心の中で、

“ 勝手に捕ってすまんかった、許してくれ。”

と念じながらイカを海に逃がしてやると、しばらくしてずっと続いていた妙な声が急に聞こえなくなった。
全員が同じタイミングで聞こえなくなったらしく、皆で顔を見合わせて変な笑いが出た。
 その後、深夜過ぎに出発した地元のヨットハーバーに到着し、近くの24時間やってる健康ランドに全員なだれ込んで、風呂に入ってようやく生きた心地になった。
 その時にHさんが、

「 これ、見てみ・・・・。」

と皆に肩や腕を見せてくれたが、3本爪で引っかいたようなミミズ腫れがいたるところにできており、あらためて皆ゾッとしたと言うことだった。











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