霧の狐道262

ghanayama
 面会人は大学生風の男二人で、山本爺にノートを見せていた。
山本爺はベッドの布団から眼だけを出しながら、何かモゴモゴ言っている。
布団で口が隠れているから、山本爺の声はくぐもって聞き取れない。
 大学生風の男二人のうちの一人が山本爺に言った。

「 先生、この数式は、モジュラー関数を使って解けばいいんですか?」
「 モゴモゴモゴ・・・。」
「 えっ・・・・。」
「 モゴモゴモゴ・・・。」
「 あ、そうか・・・。」
「 モゴモゴ・・・。」
「 あ、そうなんですか、分かりました。」
「 モゴモゴモゴ・・・。」
「 ホントに、ありがとうございました。」
「 モゴモゴ・・・。」
「 助かりました。」
「 モゴモゴモゴモゴ・・・。」
「 はい、じゃ、帰ります。
 先生も早く良くなって下さい!」
「 モゴ・・・。」

 山本爺のモゴが終わると、大学生風の男二人は大きく礼をして帰って行った。
どうも、面会の終わりの方に戻って来たようだ。

“ もう少し早く帰って来たら、山本爺の素性が分かったのに・・・。”

俺は惜しいことをしたなと思った。







☆童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ